「即戦力はいらない」八王子の不動産会社が成果主義をやめ、新卒育成に舵を切った理由の画像1

●この記事のポイント
八王子を中心に不動産事業を展開するココカラは、即戦力を求める中途採用・成果主義から、経営理念に合う人材を採用・育成する方針へ転換した。2015年に新卒採用を開始し、人材の定着や多様化を進め、リフォーム事業にも参入。店舗数3店、売上高50億円を目指す同社の人材戦略を追う。

 株式会社ココカラは、八王子・立川・日野エリアを中心に事業を展開する不動産会社だ。同社は以前、即戦力を重視して中途採用で人を集める成果主義の会社だった。好調な業績を聞きつけ、高給取りを目指して同社に転職した人も多かったという。だが2015年から新卒採用を始め、社風に沿った人を採用し育成する方針へと切り替えた。「業績が好調であれば誰でもいい」という考えを捨て、一から育てる手法を採っている。ある意味では不動産会社らしくない方法だが、なぜ人材戦略を変化させたのか。2022年に社長に就任した三原裕亮氏に、ココカラの事業内容と人材戦略について取材した。

●目次

コロナ禍でピークを迎えた八王子エリア

「即戦力はいらない」八王子の不動産会社が成果主義をやめ、新卒育成に舵を切った理由の画像2 ココカラは八王子駅近くの本店と、やや離れたロードサイドの富士森公園店を展開している。物件の仲介事業と分譲・買取再販などの販売事業、リフォーム事業を手がけている。主力とする八王子エリアの不動産事情について三原氏は次のように話す。

「駅前のマンションや土地は都内の例に漏れず、以前では考えられないような水準まで高騰しています。外国人の購入者が減って鈍化しましたが、現在でもやや伸びている傾向です。ただし郊外の戸建や土地は下落しており、全体の相場観はピークを過ぎました。現在はコロナ禍以前より2割高い水準です」(三原氏)

 コロナ禍のピーク時には、都心に近い物件を買えない現役世代が八王子エリアに流れた。3000万円台で購入できていた郊外の戸建が4000万円を超えたという。なお、ココカラはセンチュリー21に加盟しており、同社によると年間売上高は28億円に上るという。センチュリー21への加盟は、集客力やブランド力で効果を発揮するといわれているが、三原氏は加盟店同士の情報・ノウハウ共有によるメリットのほうが大きいと語る。加盟店には客が集まるが、会社の中身が伴っていなければ売上は伸びないようだ。

即戦力採用から新卒採用へ

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 ココカラは1986年に住宅工営販売として創業した。三原氏は2012年に取締役に就任し、22年に社長に就任した。この間の2015年から新卒採用を開始している。三原氏のもとで、同社の人材戦略は大きく変化した。

「以前は中途採用がメインで、とにかく即戦力を求めていました。それで業績が上がっていたのは確かですが、来るのは『稼げる会社を選んだ』という人が多く、お金で繋がっている状態です。経営理念やビジョンなどの考え方で採用する方針はありませんでした。そのためリーマンショックで業績が傾くと人材は次々に離れ、金の切れ目が縁の切れ目の状態でした。従業員の定着率を上げたい、そのためには会社の理念に沿った人を採用し、一から教育する必要があると考え、新卒採用を始めました」(同)

 三原氏は若手時代、優秀な営業マンのプレーヤーとして活躍していたが、課長時代に部下の教育に苦戦した経験がある。部下の成績が伸びず、グループの業績も芳しくない。だが、昔ながらの熱血指導では人が辞めてしまう。立場が上がるほど、根拠のある教育と経営理念の重要性を認識したという。

 ココカラは現在、「不動産でここから始まる幸せを創る」を経営理念に掲げ、日々、お客様に向き合っている。行動指針の一つに、変化を恐れずやってみるというものがあり、チャレンジングな人を求めている。そのため、新卒採用では何かに打ち込んだ経験がある人が通りやすい。そうした経緯から、自ずとスポーツ経験のある人材が多く集まるようだ。社内に社会人野球部があり、今年5月に東京不動産業健康保険組合が主催した第38回事業所対抗野球大会ではココカラが優勝した。

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定量・定性、両方の目標

 新卒採用を始めたことで、経営理念や社風に合った人を採用・育成でき、人材の定着率は向上したという。中途採用のような即効性は無いが、リーマンショック以降、長期で業績を伸ばすことができたと三原氏は説明する。女性社員も増え、人材の多様性が高まったことで、2年前にリフォーム事業を始めた。

「不動産仲介・売買は売ったら終わりの商売ですが、弊社は歴史が長く、かつて購入いただいたお客様から『リフォームしたい』と、多くの問い合わせを頂いていました。しかしリフォーム部門を持っていなかったため、断っており、歯がゆい思いをしていました。一方で人材適性の観点では、男性中心だった仲介・売買に対し、リフォームは幅広い人材が活躍しやすい部門です。顧客と長期の関係性を維持でき、人材面でもメリットがあるためリフォーム事業に参入しました」(同)

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 不動産価格の高騰を前に中古物件を選ぶ人が増えており、リフォーム需要は今後も伸びるとみられている。国も住生活基本計画で、既存住宅の取引とリフォームを合わせた市場規模を2023年の16.9兆円から2042年に20兆円へ広げる目標を掲げており、新築中心から既存住宅の活用へという住宅市場全体の流れはリフォームの位置づけは大きくなっている。今後の目標について、ココカラには定量的目標と定性的目標の両方があると三原氏は話す。定量面では店舗数を現在の2店舗から3店舗に増やし、売上高を50億円規模まで伸ばす。約40人の従業員も50人に増やす計画だ。定性的な目標では、「ワクワクする会社」をテーマとして、従業員を仕事に情熱を持てる人に育てるとしている。

 八王子市は昨年、人口が56万人を下回った。前述の通り、不動産市場も駅前と郊外で二極化が進んでいる。市場環境が変化するなか、ココカラが選んだのは、即戦力を外部から獲得するだけではなく、自社の理念に合う人材を採用し、時間をかけて育てる戦略だ。この人材戦略が、店舗数3店、売上高50億円という次の成長目標にどう結びつくのかが注目される。

(取材・文=山口伸)