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Y.コーポレーション株式会社代表取締役・平賀遊氏

 多くの不動産業者が「賃貸・売買・管理」の看板を掲げているように、不動産業者の業務は賃貸売買の仲介、管理業務が主だ。だが、大牟田市・大分市・別府市を拠点とするY.コーポレーション株式会社は売買専門を掲げ、売買の仲介業務に特化している。高齢化や過疎化が進む地域柄、扱う物件には空き家が多く、低価格帯の物件も取り扱っているという。同社は空き家管理事業「イエパト」も手がける。同社は空き家問題をどう解決しているのか。代表取締役の平賀遊氏に取材した。

●目次

空き家の要因は団塊世代の相続

売買に特化することによるメリット

空き家管理事業「イエパト」

空き家の要因は団塊世代の相続

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大牟田本店

 Y.コーポレーションは2011年に福岡県の大牟田市で創業した。福岡・熊本で新築分譲マンションを企画・販売していたこともある。2016年には不動産売買事業に特化した。21年には大分県別府市に2号店目を構え、23年には大分市に3号店目を出店した。別府市内では唯一の不動産売買専門店だという。取扱物件の特徴を聞いてみた。

「弊社は郊外が主な商圏ですので空き家が多い傾向です。地域に必要とされる企業を目指すという理念で弊社を設立しましたが、当初の商圏である大牟田市や荒尾市(熊本)は高齢化で空き家があふれており、空き家の売買に注力するようになりました。一戸建ては築30~60年のもので、30~40年がボリュームゾーンです。価格帯は300~2500万円で、他社が扱わない数十万円から100万円程度の低価格物件も扱います。売主は50~60代の方が多く、遠方に住まれる方が相続を機に売却する事例があります」(平賀氏)

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別府店

 空き家問題の一因とされるのが団塊世代の相続だ。団塊ジュニア世代は東京、大阪、福岡など大都市圏に移住していることが多く、親が残した実家が空き家となってしまう。築年数が長いうえに、郊外立地では買主を見つけるのも難しい。だが、Y.コーポレーションでは売主に沿った売買を心がけているという。一人でも購入者がいれば売買は成立するため、価格を相場の“天辺の天辺”に設定し、安易な安売りはしない。相場の上昇にも貢献したようだ。「売れない不動産は無い」と平賀氏は主張する。当初対応していた大牟田市、荒尾市以外にも空き家の売買ニーズは多く、大分への進出に至った。

売買に特化することによるメリット

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大分中央店

 売主・買主双方とも現在ではほぼ100%がネットによる集客だという。大手ポータルサイトや自社サイトのほか、インスタグラムなどのSNSでも集客している。買主・売主からの問い合わせに対する初期対応では、インサイドセールス代行の「楽トス」も活用している。築年数の長い物件を誰が購入するのか、空き家の購入者層について聞いてみた。

「購入者には幅広い年齢層がいます。年配の方が現金で購入できる物件として空き家を購入するほか、築年数が浅く、比較的高価な物件はファミリー層が購入します。実需による購入目的が多いです。弊社は建築業の免許も取得しており、買主が希望される場合はリノベーションも請け負います」(同)

 都市部の不動産価格高騰が進む昨今、中古物件を検討するファミリー層は増えている。前述の通り、Y.コーポレーションは売買に特化している。都市部では売買専門の業者は多いが、同社のような郊外立地では珍しい。売買特化によるメリットを聞いてみた。

「売買に特化しているため、市場の動向を正しく把握でき、相場の範囲内でより高く売ることができます。弊社の社員は売買に精通したプロフェッショナル集団です。売買はお客様の人生の中で1、2度しかない判断を下す重要な局面ですので、専門性を持ったスタッフが対応する必要があると考えております」(同)

 他社の場合、社員は賃貸・管理しか扱わず、売買は店長が仲介する例が多いが、Y.コーポレーションでは新人を含めた全員が売買業務を手がける。

空き家管理事業「イエパト」

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 同社は創業の2年後に空き家管理事業「イエパト」を開始している。イエパトはどういったサービスなのか。

「高齢化や人口減少で空き家が増えていることを踏まえ、始めたサービスです。イエパトでは、遠方に住む所有者に代わって空き家の巡回・管理を行います。月1回、窓の開閉や水の開け閉め、清掃などを行い、報告書を作成して所有者様に報告いたします。平成28年の熊本地震のほか、洪水発生時には無償でスポット巡回も行いました」(同)

 イエパトの管理物件が売却に至った事例もあり、管理件数は年々増えているという。建築物は人が一切管理せずに放置してしまうと、劣化が早くなる。バブル期に開発されたリゾート地や限界集落など、極端な事例ではツタが生えて壁を壊すこともある。空き家が増え続ける現状、イエパトのようなサービスは需要が伸びていきそうだ。最後に改めてY.コーポレーションの展望を聞いてみた。

「創業当初は仲介の成約件数が年間30件程度でしたが、現在では3店舗で200件を超えました。現在、売主からお預りしている売り物件は全社で600件を超えています。空き家問題は九州全体に共通する問題で、仲介のニーズは大きいと考えております。『売主ファースト』の姿勢を心がけ、今後も郊外エリアでの新規出店を目指したいと思います」(同)

 高齢化社会が進み空き家が増える一方、不動産価格の上昇や金利上昇で新築は手が届きにくい物件となっており、中古物件の需要は根強い。空き家問題を解決するY.コーポレーションの今後に注目したい。

(取材・文=山口伸/ライター)

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