
●この記事のポイント
・京都で狭小地をターゲットに低価格の住宅販売を進めるドリームホームは、社員の自主性を重視し、創業から約10年で11店舗まで拡大。
・中古物件のリノベーション事業「Re Dream」にも注力し、多様な顧客ニーズに応えている。
・2021年に上場企業グループに参画し、資金力や建築ノウハウを強化した同社は、大阪進出や収益不動産にも挑戦する方針。
京都市は余っている土地も狭く、新居に目ぼしい土地を見つけるのも難しい土地柄だ。そんな京都において、10数年で11店舗まで勢力を伸ばしたのが株式会社ドリームホームだ。他社より比較的安く住宅を提供し、多店舗展開に至ったという。中古物件のリノベーションも手がける。新参者がどのようにして京都を開拓したのか。 同社の代表取締役社長 中川友二氏に取材し、事業の強みを聞いた。
●目次
狭小地をターゲットに勢力を伸ばした

ドリームホームは2008年に創業した。京都有数のビジネス街である四条烏丸と四条大宮の間に本社を置いている。店舗数は本社を含めて11店で、京都に8店舗、大阪に2店舗だ。古参の不動産業者も多い京都でなぜ、短期間に勢力を拡大できたのか。
「狭小地をターゲットにしたことが多店舗展開につながりました。京都市内にあえてそうした土地を狙う業者様は少なく、自ずと弊社の強みになったのです。弊社は1件1件そうした土地を探し、開発しています。また、社員にチャレンジさせる文化があり、優秀な社員にいち早く店舗を持たせたことで、短いスパンでの出店に至りました」(中川氏)
社員の自主性が強い企業文化であり、全てがトップダウンの企業ではないと中川氏は話す。狭小地をターゲッ トにすることで他社より販売価格を抑えられ、価格が強みになったという。
「弊社の建売住宅は平均3600万円で、他社より少しお値打ちです。安いからといって駅から離れているわけではなく、駅から15分圏内の土地を仕入れるよう努めています。購入者のボリュームゾーンは30代中盤で、年収は500~700万円程度の方が多いです」(同)
参考までに山科や長岡京などの立地でも、建物面積80平米台の新築住宅は4000万円を超えることが多い。2010年代から不動産価格の上昇が続くなか、ドリームホームは低価格を実現することで会社員世帯のニーズをつかんだと考えられる。
「Re Dream」で中古の戸建・マンションを再生

ドリームホームは新築住宅の販売だけでなく、中古物件のリフォーム事業「Re Dream」も手がけている。新築物件の価格が高騰し、手が届きにくい存在となるなか、中古物件を選択する世帯も増えている。Re Dreamでは、どういったリフォームを手がけるのだろうか
「Re Dreamでは1981年の新耐震基準以降の物件を仕入れてリフォームし、2500万円前後で再販しています。新耐震基準以降の物件は瑕疵保険を付けられます。基本的には水回りを含むフルリノベーションを行い、壁をぶち抜ける場合は抜いて部屋を広くします。物件はマンションが主で、畳の和室は洋室に変えることが多いです」(同)
新耐震基準は「震度6強から7程度の大地震でも建物が倒壊しないこと」を求められており、基準適用の前後が一つの判断基準となる。中古が人気とはいえ、投資家目線・居住者目線のいずれにおいても、新基準以前の物件は避けたほうがよさそうだ。戸建と比較すると中古物件のマンションは頑丈である一方、木造の戸建て住宅は「どこまで触れば良いか」判断しづらい部分もあるが、ドリームホームはこれまでに培った知識やノウハウを活用し、古い戸建も再生させるという。
「Re Dreamは現在、中古物件の買取再販が主ですが、多くの業者が同じような事業を展開しております。競争が激しいうえに購入希望者のニーズも多様化しているため、より細かくお客様の要望に答えられなければなりません。今後は従来の買取再販から、リフォームの請負にシフトしようと考えております」(同)
単身者や子どもが居ない世帯には、部屋数を少なくしてでもリビングを広くしたいというニーズがあるようだ。洗濯物を乾燥機で乾かすため、バルコニーが要らないという客もいる。購入者の年齢や購入目的は多様化している。
上場企業グループ入り後の変化

ドリームホームは2021年、東証スタンダード上場の不動産企業であるAVANTIAのグループに参画した。現社長の中川氏もAVANTIA出身である。上場企業グループに参画後、ドリームホームはどう変化したのだろうか。
「ドリームホームはもともと営業力の強い会社でしたが、上場企業による建築のノウハウや資金調達の強みが加わり、企業体制がさらに強化されました。以前は建築条件付き土地販売による売建販売が主でしたが、資金力が補完され、建売も手がけるようになりました。AVANTIAの設計士も参加しています」(同)
上場企業の信用力により、物件仕入れ時には以前の半分程度の金利で資金を借りられるようになったという。また、以前は社員の自主性を尊重する文化がある一方で、各店舗の独自性が強く、中央に情報が集まりにくいという弊害もあった。中小企業ならではの非効率な部分も一部では見られたため、営業管理を強化し、効率化に努めたという。今後の展望について聞いてみた。
「狭小地に物件を建てるノウハウは京都市以外でも活用できるため、今後は大阪市にも進出したいと考えております。また、グループ会社のDreamTownで特定建設業許可を取得したため、より大きい物件も取り扱えるようになりました。インバウンドも多い立地柄、今後はアパートや民泊施設も視野に入れ、収益不動産を強化する方針です」(同)
AVANTIAのノウハウを活用しつつも、ドリームホームが創業以来大切にしてきた「愚直に人を大切にし、利他の心を持つ」姿勢を今後も尊重したいと中川氏は話す。昨今、不動産物件の価格が高止まりし、金利上昇も懸念されている。不動産取得のハードルが高まる中、比較的安い狭小地の新築物件や中古物件は会社員世帯を中心に高いニーズがありそうだ。京都市を押さえたドリームホームは大阪市に攻めこもうとしている。
(取材・文=山口伸/ライター)
