●この記事のポイント
・滋賀・湖南エリアでは草津市を中心に不動産需要が拡大し、新築よりも中古・リフォームが注目されている。
・しげのぶ不動産は建設業から不動産に参入し、リフォームや買取再販事業を強化して事業を拡大。
・新築需要減少を見据え、高い生産性を武器に、中古物件の価値を高めるビジネスモデルで地域市場をリードする。
滋賀県の県庁所在地は大津市だが、駅前にタワマンが建つなど近年では草津市の発展が著しい。駅の乗降客数は大津駅が3万人台であるのに対し、草津駅は5万人を超え、県内トップである。草津市を含む湖南エリアで不動産業を営むのが「滋賀・湖南エリアでは草津市を中心に不動産需要が拡大し、新築よりも中古・リフォームが注目されている。
土地、戸建、マンションと様々な物件を手がけ、リフォーム事業も展開する。創業当初は建設業だったが、事業規模拡大の一環で不動産業にも参入したという。しげのぶ不動産の伊藤重信社長に事業内容と湖南エリアの不動産事情を聞いた。
●目次
草津駅周辺は大津より活気がある

しげのぶ不動産は湖南市、甲賀市、草津市、栗東市の4市で事業を展開し、草津と湖南に拠点を構える。伊藤社長は建設業のサラリーマンとして18年間勤務した後、独立した。5期目までは建設業の専業だったが、厳しい市場環境を背景に不動産事業にも参入した。14期目にあたる現在では、利益のうち建設業と不動産業がちょうど半々を占めるという。湖南エリアに住む住民の特徴について伊藤社長は次のように話す。
「草津市、栗東市で物件を購入される方は大阪・京都に通勤する方が多い印象です。草津から京都までの所要時間は新快速で20分程度しかありません。一方、湖南市や甲賀市には工業団地があるため、地元に勤める人も多いです」(伊藤氏)
大津駅周辺や琵琶湖寄りのナカマチ商店街など、大津の中心地では街の活気が薄れつつある。一方で草津駅では利便性が注目され、不動産開発が進んだ。2000年以降に「リーデンスタワー草津」や「ザ・草津タワー」など30階建て規模のタワーマンションが建設されている。筆者は両駅を訪れたことがあるが、草津は駅前に大型商業施設もあり、大津駅より活気がある。
戸建は100平米超えが当たり前
しげのぶ不動産では土地や戸建、新築や中古などジャンルを問わず手広く事業を展開している。新築住宅も建売と注文住宅の両方を手がける。草津市では駅チカの物件を希望する購入者も多いが、滋賀県は車社会でもあるため、その他の地域では必ずしも駅からの距離は重要ではないという。
「弊社で扱う新築物件は概ね2500~3000万円台です。新築の場合、25~40歳くらいの方が購入されます。近年では若年層の間で中古に対する抵抗感が薄れており、中古物件を希望される方もいらっしゃいます。リノベーション物件の場合、自分好みにアレンジしても新築よりは2、3割程度安くできるので、予算を抑えたい方には人気です」(同)
不動産価格が高騰している現状、会社員世帯を中心に中古を選ぶ世帯も増えている。そして、大都市圏近辺で外へのシフトが進んでいるように、大阪、京都からの移住先として滋賀県を選ぶ人も多いという。
「滋賀県内の物件はやはり安さがメリットです。戸建では100平米超えが当たり前で、マンションも3LDKで70平米を超えます。仮に新築の購入で5000万円を予算とした場合、草津市では良い物件を買えますが、京都市内では、草津市ほど広く新築のような物件が買えないのが現状です。」(同)
京都駅を起点にすると草津駅までの直線距離は約20kmだ。東京駅を起点とした場合の武蔵野線沿線に相当する。移住者は不動産物件のコスパの良さを理由に湖南エリアを選んでいるのかもしれない。
リフォーム事業と買取再販事業を強化する
しげのぶ不動産ではリフォーム事業も展開している。例えば2500万円で買い取ったマンションの部屋を700~800万円かけてリフォームし、最大400万円の粗利を狙って再販する。リフォームはトイレや風呂などの水回りが中心だ。
「あと15年もしたら新築の需要が半分になると言われています。そのため、今後はリフォームと買取再販を伸ばす方針です。リフォームは販売よりも仕入れが命です。より多くの売主を見つけ、他社より早く仕入れなければなりません」(同)
相場通りの物件であればすぐ売れるが、買取は簡単ではない。リフォームに適した物件を見つけるのが難しいようだ。売主向けの専用サイトを開設し、売主からの問い合わせにはすぐに対応できるよう、「楽トス」を通じて追客対応をアウトソースしているという。楽トスはネットでの買主や売主からの問い合わせに対し、80秒で架電する点を売りとしている。最後にしげのぶ不動産の強みを聞いてみた。
「社長の私が自分で言うのもあれ何ですが、会社の雰囲気やメンバー間の仲は良いと感じています。弊社は10人しかいないため、1人当たりの生産性を向上したく、チームプレーができる人材を厳選しました。業界では従業員1人あたり年間3、4000万円の売上が相場ですが、弊社は1億円です。雰囲気の良さがモチベーションにつながっていると考えています」(同)
一人当たりの工数ではなく、能数が重要であると伊藤社長は話す。滋賀県の人口は約140万人。現在がピークと見られ、2040年には130万人になる見込みだ。新築物件は人口減少よりも高齢化による需要減少が大きいとみられる。しげのぶ不動産は従業員の高い生産性を武器に、リフォーム・再販事業を伸ばそうとしている。
(取材・文=山口伸/ライター)