中古マンション平均1.1億円の衝撃…止まらぬ価格上昇、どうすれば家を買える?の画像1
UnsplashLevi Meir Clancyが撮影した写真

●この記事のポイント
・東京23区の中古マンション平均価格が初の1.1億円超え。新築の高騰で実需が中古市場に流入し、価格差はわずか2割に。実需と投資マネーが交錯する「構造的高騰」が進んでいる。
・新築用地の不足と建設費高騰により供給が減少し、「高くても売れる」状況が続き、築浅中古も新築並みの価格になっている。都心では海外投資家の買いも増加している。
・ファミリー層の現実的選択肢は、23区周縁の足立区など“ねらい目”エリア、または埼玉・千葉など郊外の通勤圏。今後は価格の二極化と、早期判断が鍵を握る。

「中古マンションが新築に比べて安価に購入できる」という常識は、もはや過去の話になりつつある。不動産調査会社・東京カンテイが10月23日に発表した最新データによれば、2025年9月時点の東京都23区の中古マンション平均価格は、ついに1.1億円を突破。調査開始以来、初の大台乗せとなった。

 一方で新築マンションとの価格差は、わずか約2割まで縮小している。なぜ今、中古市場がここまで加熱しているのか。そして、一般のファミリー層が現実的に住宅を手に入れるにはどうすればいいのか。

●目次

新築価格の異常な高騰が「玉突き現象」を生む

 背景には、まず新築マンションの価格高騰がある。建設用地の枯渇、資材費や人件費の上昇が重なり、23区内で新築マンションを建てること自体が「贅沢な事業」になりつつある。国土交通省の統計によれば、東京23区での新築分譲マンションの平均価格は2024年度に1億3000万円を超え、10年前の約2倍に膨らんだ。

「新築は高すぎて買えない」層が中古市場に流れ込む。結果として、実需に基づく買い需要が中古市場に集中し、成約件数はこの1年で6割増。不動産仲介大手の担当者が「以前は中古といえば“価格重視の妥協策”でしたが、今は“新築と遜色ない選択肢”と見なされる。結果的に価格も吊り上がっている」と語るように、中古市場の需要が高まり価格が高騰している様子が見て取れる。

 中古市場の熱気を背景に、販売事業者側の姿勢も変わった。「高くても売れる」——この確信が、価格設定の強気を後押ししている。

 不動産経済研究所によると、都心3区(千代田・港・中央)の中古マンションの平均成約単価は、2023年から2025年にかけて約25%上昇。築浅(築10年以内)の物件では、新築とほぼ同水準の坪単価で取引されるケースも珍しくない。その裏にあるのは「実需+投資」の二重需要だ。かつて中古市場は“実需の受け皿”として安定していたが、今や投資家マネーの流入が加速している。

投資マネーの流入が中古市場を押し上げる

 近年、国内外の投資家が「都心の中古マンション」を“代替資産”として買い始めている。その理由は明確だ。供給の減少見込みと資産価値の安定性である。

 デベロッパー各社が都心での新築開発を進めたくても、土地取得コストと建設費があまりに高いため、供給は減少傾向にある。結果として、すでに存在する中古ストックが「希少資産」と化しているのだ。金融アナリストの一人はこう語る。

「金利が相対的に低水準で推移する日本では、不動産は依然として“インフレヘッジ”の代表的な選択肢。新築が高すぎて利回りが取れないため、築浅中古に投資マネーが流れています」

 特に都心部では外国人投資家の買いも目立つ。香港や台湾からの富裕層が「円安+日本の不動産安」を好機と見て、港区や渋谷区の築浅中古を現金で購入するケースが増えているという。

ファミリー層の「現実的な選択肢」

 では、東京で働くファミリー層にとって、どのような選択が現実的なのか。不動産コンサルタントの秋田智樹氏に聞いた。

(1)23区内で“ねらい目”を探す

「23区の平均が1.1億円を超えたとはいえ、区によって差は大きいです。足立区・葛飾区・江戸川区などでは平均価格が5000万円前後にとどまり、まだ現実的な水準にあります。実際、足立区内の北千住駅周辺では、駅徒歩10分圏・築15年・70平米クラスの物件が6000万円前後で取引されています。

 足立区などは治安や学区のイメージが過去の印象で語られがちですが、近年は街づくりが進み、若い世代の移住も増えています。早めの判断が功を奏するでしょう」

 ただし注意点もある。人気上昇によって地価上昇スピードが加速しており、「待てば安くなる」構図は通用しにくい。早期の資金計画が重要だ。

(2)郊外に目を向け、広さと価格を両立

 通勤時間を許容できる層には、郊外エリアという現実的な選択肢もある。

「首都圏全体の中古マンション平均価格は約6000万円ですが、埼玉・千葉の一部では2000万~3000万円台の物件も多く、通勤時間1時間圏で3LDK・70平米超も狙えます。とりわけ、埼玉県川口市・千葉県市川市・松戸市などは、東京都心へのアクセスがよく、再開発も進む人気エリアです。住宅価格に対して教育・生活環境の満足度が高いとして、若いファミリー層が流入しています。

 新築でも中古でも、“駅徒歩15分以内・築20年以内”の物件は資産価値が落ちにくいので、将来的な売却も見据え、流動性の高いエリアを選ぶべきです」

 そのうえで、購入を検討する際の「3つの視点」を提示する。

1.築年数・修繕履歴を確認する
「中古物件では、築年数が浅くても管理組合の財政が不安定なケースもあります。大規模修繕の履歴や積立金の水準を必ずチェックすることが肝心です」

2.金利上昇リスクに備える
「変動金利でローンを組むケースが多いですが、日銀の金融政策転換次第では支払額が上昇するリスクもあることに注意が必要です。固定金利や繰り上げ返済を視野に入れ、長期的な返済シミュレーションを行うべきでしょう」

3.将来の売却・賃貸需要を見極める
「職住近接ニーズが高まるなかで、駅近・再開発エリアなど“貸しても価値が残る”物件を選ぶことが、結果的に資産防衛につながります」

価格上昇はどこまで続くか

 専門家の間では、「価格の上昇ペースは鈍化するが、下落局面には入りにくい」との見方が支配的だ。

「国交省の住宅着工統計によれば、都心部の新築供給戸数は前年から約15%減。一方、東京23区の人口は依然として微増傾向にあり、需要が大きく落ち込む要因が見当たりません。中古価格が1.1億円を突破しても、実需と投資の両輪で支えられているのでs、今後は“築浅・好立地”と“築古・郊外”で二極化が進むと考えられます」

 東京23区の中古マンション価格高騰は、単なる“バブル”ではなく、新築高騰・供給減少・投資流入という構造的な要因に支えられている。

 この状況でファミリー層が住宅を取得するには、
 ・価格上昇が続く「ねらい目エリア」を早めに確保する
 ・郊外に目を向け、通勤とのバランスを取る
 ・資産価値と管理状況を重視する
といった“戦略的判断”が求められる。

 今や「マンションを買う」という行為は、単なる住まいの確保ではなく、資産設計とリスク管理の意思決定でもある。住宅市場の変動を正しく読み、早めに動けるかどうかが、次の10年の暮らしと資産を左右する。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)